田植えから収穫までの田んぼのハイパースペクトルカメラ計測-2016年-
2016年にてCosmosEyeシリーズのハイパースペクトルカメラHSC1804-CL2を使った田んぼの田植えから収穫までを定点観測にて計測したデータになります。撮影場所は、北海道札幌市に隣接している江別市の農家さんのご協力の元に邪魔にならないように行いました。
このときの計測には、無人で計測するために開発した「スケジュール撮影機能」を使いました。
使用機種 | HSC1804-CL2 |
撮影期間 | 2016.06 – 2016.09 |
撮影対象 | 田んぼ |
取得データ数 | 200データ以上 |
撮影場所 | 北海道江別市 |
備考 | スケジュール撮影機能による無人定点観測 |
この年は、初めてハイパースペクトルカメラを無人で動作させるための検証となったため、どんなトラブルが起きるかわかりませんでしたが、わくわくしながら行っていました。実際に、色々トラブルがあり大変でしたが・・・・。
田植えから収穫までのスペクトルデータ結果
計測したデータを幾つか選定し、田植えから収穫までの全体の流れがわかりやすくご紹介します。尚、実際の画像データの容量が大きいために、1280pxX680pxに画像を縮めています。
スペクトルイメージ-RGB-
人が見てる色合いで再現したRGBイメージです。稲が成長し、そして、稲穂の色が変わっていくのがわかるかと思います。
9月27日においては、奥の稲が収穫され、手前はまだ収穫はされていません。
NDVI解析処理イメージ
よく農業リモートセンシングの際に用いられるNDVI:正規化植生指数による解析処理を行いました。これは、クロロフィルの吸収度から光合成活性能力の度合いを測るためによく使われています。現在、ドローンによる農業リモートセンシングが広がっていますが、このNDVIによって農作物を管理することがよく使われています。
ここでは、20階調とグレースケール(白黒)にした画像を用意しました。20階調では、成長していくほど赤色に近くなってゆき、光合成能力が下がると黒色に変化していきます。グレースケールにおいては、白へ明るくなるほど光合成能力が高く、黒く暗くなるほど低くなることを示します。ただし、稲穂の場合は、後述しますが、この傾向をしっかり把握しておく必要があります。
20階調イメージ
2016年6月10日(田植え直後) 2016年7月01日 2016年7月29日 2016年9月06日 2016年9月27日(収穫時期)
グレースケール
2016年6月10日(田植え直後) 2016年7月01日 2016年7月29日 2016年9月06日 2016年9月27日(収穫時期)
スペクトルデータグラフから視る変化
ハイパースペクトグラフで時系列に比較して行きます。以下のイメージの「スペクトル解析エリア」のスペクトルデータを抽出しグラフとして並べました。
各月ごとのハイパースペクトルグラフからは、スペクトルグラフ形状が異なっているということは見てわかりますが、このグラフを見ただけではどのような変化が起きているのかが、よくわかりません。
そこで、このデータからNDVIを算出してみました。NDVIの算出方法に関しては、改めて記事にしたいと思いますが、640nmから800nm間から2つの波長データを使い差分計算したものがNDVIの計算になります。
先に説明したように値が高いほど光合成活性能力が高いこと(20階調:赤いに近くなるほど、グレースケール:白に近くなるほど)を示しますが、このぐグラフから8月にはピークになり、収穫が近くなるほど光合成活性能力が下がるということになります。
おわりに
シーズンを通して田んぼのスペクトルの変化を画像として記録することができました。このシーズンで天候によってうまくスペクトルデータが撮れなかったり、制御用PCがフリーズしたりと色々ありました。設置した場所の室内の温度が高くなりPCが停止したのだろうという動作や電源が不調になったりとありましたが、そんな環境においてもハイパースペクトルカメラ自体は故障もせずに動き続けてくれてました。
ただ、ここで気おつけておきたいことは以下のことです。
お米は収穫に近づくほど稲穂が垂れ黄金色へ変化(光合成能力が下がる)していきます。(NDVIが低下)しかし、これは、お米にとってあたりまえの変化であることを理解把握しておく必要があります。なぜならば、収穫時に光合成能力が下がっている=鮮度が悪いという判断をしてしまう可能性があるためです。
2017年と2018年も同様の計測を試みております。田んぼのデータに関してご興味のある方はぜひお問い合わせください。