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ハイパースペクトル事業

ハイパースペクトルカメラとは?

ハイパースペクトルカメラとは

1.ハイパースペクトルカメラの定義

ハイパースペクトルカメラは国際的に明確な定義があるものではなく、一般的に特定の波長帯を数十〜数百バンドに分光した情報と空間情報(ピクセル)を同時に取得できるカメラがハイパースペクトルカメラと呼ばれています。4バンド〜十数バンドの分光情報を取得できるカメラをマルチスペクトルカメラと呼ぶことが多いです。

ハイパースペクトルカメラとは

上図のように、ハイパースペクトルカメラとは、通常のRGB画像と比べて色の情報量が多いカメラと捉えると分かりやすいかもしれません。

スペクトルデータのイメージ 細かく格子状に分割された画像の一点ごとに141バンドの色情報(強度)が取得できる。

ハイパースペクトルカメラで対象を撮影することでそれぞれの画像のピクセルに合わせて細かなスペクトル情報を取得することができます。

2.ハイパースペクトルカメラの歴史

ハイパースペクトルカメラは、20世紀初頭に米国の軍事研究所が迷彩加工された戦車などの敵位置把握を行うために生まれたという説が有力です。1950年代に人工衛星に搭載されるようになった頃にはハイパースペクトルイメージャーと呼ばれており、ハイパースペクトルカメラの呼称が日本国内で定着したのは2000年代の初頭です。産業用途で利用され出したのもこの頃からです。

ハイパースペクトルカメラ 歴史

弊社の故代表取締役佐鳥新は、2003年北海道工業大学に教授として在籍していた際、「北海道衛星構想」を打ち立て、衛星のセンサー部として日本国内で初の光学ステージスキャン方式のハイパースペクトルカメラを開発しました。当初の衛星用の大型機体を2007年には小型にし、商用モデルとしてHSC1701の販売を開始、その後も高解像度モデル(HSC1801)の開発やハイエンドモデル(HSC1804)の開発に成功し、現在も販売を続けています。

3.ハイパースペクトルカメラの種類

ハイパースペクトルカメラには、大きく分けて3つの形式があります。
厳密に言うとかなり細かくなり、以下のブログでも紹介していますが、ここでは簡単に3種類に分けて解説します。

スペクトルカメラのメリット・デメリット

1) ラインスキャンタイプのハイパースペクトルカメラ

ラインスキャンタイプは、スリットから入ってきた一次元の光の情報を分光(回折格子やプリズムなど)し、イメージセンサで取得する方式です。

ラインスキャンタイプのハイパースペクトルカメラに関するイメージです。

工場のラインなどに設置することが前提の「外部に動作機構を持つタイプ」(ResononやHyspexさんなど)が一般的ですが、国内だと弊社のハイパースペクトルカメラやエバジャパンさんのステージスキャンを搭載したハイパースペクトルカメラも原理上はラインスキャンタイプに分類されます。

このタイプのメリットは、
① 一ラインごとの波長について時間差がないこと
② 波長分解能が高く、安定していること

デメリットとしては、
① 不規則に動いているものを撮影することが難しい
②全体の撮像に比較的時間がかかること

です。

2) スナップショットタイプのハイパースペクトルカメラ

スナップショットタイプは、imecさんが開発されているハイパースペクトルセンサーを使用しているケースが多く、通常のRGB画像のセンサーがRGBGの4つのフィルターをセンサー直前に設置しているのに対し、最大数十ものバンドパスフィルターを設置し、分光を行うことができます。

スナップショットタイプのセンサ

センサー自体は他社にも販売されているものなので、現在多くの会社がこのタイプのハイパースペクトルカメラを製造し始めています。

このタイプのメリットは、
① 不規則に動いているものの撮影が可能
② 高画質な画像を取得することが可能

デメリットは、
① 1ピクセルあたりの光量が低くなる(画像が暗くなりやすい)
② 波長分解能に限界がある(十数バンドのものが多い)

です。

3) 分光フィルタータイプのハイパースペクトルカメラ

分光フィルタータイプは、バンド数が低くマルチスペクトルカメラに近いタイプですが、液晶チューナブルフィルターについてもこの方式です。

分光フィルター方式のハイパースペクトルカメラについてのイメージです。

原理としては3つの中で1番分かりやすいと思いますが、特定の波長しか通さないフィルター(バンドパスフィルター)を通して撮影したデータを合成することで複数のスペクトル情報をもった画像データを取得できます。
液晶チューナブルフィルターは電気的にフィルターの通す波長帯を調整できるため、撮影した画像を合成することで、通常のバンドパスフィルター方式に比べて比較的広い波長帯をカバーすることができます。

この方式のメリットは、
① 高画質な画像を撮影できる
② 動作機構を必要とせず小型になる

この方式のデメリットは、
① 波長ごとに撮影時間にずれがあり、動いているものの撮影に適さない。
② バンド数が低いものが多い

です。

この他にあまりメジャーでないタイプですが、波長分光方式と言って、特定波長の光のみを照射し、複数枚の画像を合成することで複数スペクトルを持つ画像を作成する方式もあります。

4)ハイパースペクトルカメラの構造(ステージスキャンタイプの場合)

ステージスキャンタイプのハイパースペクトルカメラを構成する要素は簡単に分けると3つあります。

構成要素は、①スリット、②分光器、③イメージセンサです。

スリット部が光を一次元情報(ライン)として分光器に届け、分光器(プリズムや回折格子)がそれを分光し、イメージセンサーがそれを捉えます。

この工程を、稼働するステージ上で行うのが弊社のステージスキャン方式です。

5.ハイパースペクトルカメラの用途/事例

ハイパースペクトルカメラは、通常のRGBでは見ることのできない波長の違いを捉えることができるため、特に工学・生物学・医学分野などの領域で研究が進んでいます。

また、近年では工場ラインへの導入も進んでおり、異物検知や品質管理、成分検査などの分野で活躍しています。ここでは、弊社のハイパースペクトルカメラによる解析の事例を3つ紹介します。

①ファンデーション塗布箇所の可視化

図のようにファンデーションを塗布した箇所と塗布していない箇所で、綺麗にイメージングすることができました。人間の目では識別しづらい色の違いを識別できています。化粧品の評価などでの応用が期待できます。

②マグロ鮮度の指標化

食品分野では、マグロの鮮度を可視化することに成功しています。丸で囲っている特定の波長帯に鮮度を段階的に評価できる可能性のあるスペクトルを確認。こういったケースでは鮮度のように数値化しにくい要素を指標化することができるようになります。

③土壌の粘土質/非粘土質評価

このケースでは、土壌の粘土質/非粘土質をスペクトルで分類することに成功しています。屋外での撮影も可能なステージスキャンタイプであれば、このようにインフラ分野での応用も期待できます。

Iris株式会社は、数々のご依頼を技術と工夫で解決してきました。異物検知・品質管理・成分分析などで何かお困りのことありましたら、ぜひIrisにご相談ください。

ハイパースペクトルデータ解析例 | 北海道衛星株式会社